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ガラケーはいつまで存続するのか?―日本のモバイル業界の今後

  • August 09, 2013

appleのiphone(当初の3G/3GSや4/4Sなど)の日本市場への投入に象徴されるように、スマートフォンが登場して久しいですが、日本の携帯端末メーカーは一層、試練に見舞われている状況となって来ました。はたしてユーザー側としても、まだガラケーを使っていてスマホにしようか迷っている人はどうしたらいいのでしょうか?またスマホを使っている立場からしたら、今後モバイル端末業界はどうなって行くのでしょうか?

そもそもガラケー(フィーチャフォン)とスマートフォンの状況を考える上で、これまでの業界の経緯を振り返ってみたいと思います。日本の携帯端末業界は、1985年の電電公社の民営化などがあり、通信キャリアとしても自由化が行われ、1990年代前半から中盤にかけてに自動車電話から発展したアナログの携帯電話が、PHSの繋がりにくさなどへの不評もあって、結果として一気に一般に広がりました。

その後、携帯電話の回線と端末がデジタル化され、ISDN回線の普及やWindows95登場と相まってインターネット業界が大いに発展し、端末としてもdocomoのi-modeが先駆けとなって携帯電話がネット端末として機能するという当時、世界的にも類を見ない先進的なサービスとして展開して行きます。

日本市場に特化した、いわゆる「ガラパゴス」的な発展を、通信キャリアとしてもモバイルサービス業界としても端末メーカーとしても享受することとなります。IT業界もモバイル端末に対応したサービスを展開しないと生き残れない、そんな声まで飛び交うようになります。i-modeなどの公式サービスに採用されると月額で1ユーザーから一人当たり300円とか500円とかをほぼ自動的に集められるわけですから、かなりの収益を上げる事もできたわけです。

そうした状況もiphoneの登場と世界的な成功で一気に変わります。当初の3GSなどは日本のユーザーやメーカーも「マニア向けのオモチャだ」といったかなり冷めた目で見る向きも多かったように記憶していますが、ソフトバンクがテコ入れをした事もあり、次の世代のiphone 4/4Sの登場で一気に日本市場に広がり、正に 「黒船」とも言えるインパクトを業界に与えて行きます。

国内の通信キャリアの王者だったdocomoはi-modeに固執し、i-modeのサービスがバンドルできないiphoneを売らない方針を打ち出し、auも遅れをとり、結果としてソフトバンクとiphoneに顧客を奪われる事態となって行きます。これに危機感を覚えたdocomoとauは、関係の深い日本の携帯端末メーカーと共にスマートフォンの開発を急ぐと共に、サムスンやHTCなどの海外メーカーの製品をこぞって扱うようになります。

ところが、2000年代後半から2010年あたりまでの国産メーカーのスマホは正直出来がいいとは言えませんでした。ユーザーの方の中にも苦い思いをされた方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。そういった事もあって、一層iphoneとGalaxyなどの海外のトップセラー端末の人気が高まり、国内の端末メーカーは苦境に立たされます。同時にガラケーに特化したi-modeなどのキャリア公式のコンテンツサービスのプラットフォームはIT関連企業の各サービスがスマホに対応する中で、一気に衰退します。2013年現在、ガラケーのコンテンツサービスはもはやかつての栄華とは比べ物にならないほど閑散としています。つまり、端末、通信キャリア、ネットサービスといった全ての意味で、日本のガラパゴス的な楽園は終焉し、世界標準へと一気に転換して行く事になったのです。

この荒波を最も受けているのが、先にも言いました日本の端末メーカーでしょう。国内の携帯メーカーは統廃合や撤退が相次ぎ、2013年前半の段階でガラケーを供給できる国内メーカーは京セラと富士通、スマホから逆に撤退してガラケーに特化するとしているNECの三社くらいといった状況です。

特に後の2社は企業自体がかなり経営的に苦境に立たされている状況で、正直いつガラケー事業そのものから撤退してもおかしくは無いとも言えるでしょう。つまり、日本のモバイル市場は遠からずガラケー自体がメーカーとしても供給できない、ほとんど絶滅に近い状態になってしまう可能性もいよいよ現実のものとなって来ました。

もちろん、スマホの国内普及率は未だ5割前後ですし、ユーザー視点からみればスマホの月額料金の高さや、ネットをしない人にとってみればスマホの使い勝手、インターフェースになじめないという人もいるでしょう。ここでガラケーが細々とでも生き残る上で、カギとなるのは、キャリアとユーザー次第かも知れません。

いくらメーカーがガラケーを作ると言ってもキャリアがガラケーを売るつもりが無ければ、キャリアが通信インフラと顧客を握っている以上、どうにもなりません。ガラケーを使いたいというユーザーが一定以上居て、キャリアもガラケーを存続しようと思い、メーカー側も開発とサポートができる体力がある限りにおいてガラケーは今後しばらく、最低でも今後5年くらいは存続していくかも知れません。その先は分かりません。

考えうる未来として、

1.今後2017年頃までにスマートフォンが7割程度まで普及し、ガラケーの供給が止まる。
 キャリアもガラケー向けのプランとサービスを段階的に停止する。

2.今後も10年程度はガラケーが4割程度のシェアを維持する。

3.端末の仕様やサービスの中身からしてそもそもスマホとガラケーの区別をする意味がなくなる。
 プランやサービスの上でも統合され、月額利用料金も若干安価になる
 (android端末などが実質的にガラケーのプランやインターフェースの一部を取り込み吸収する)。

こういった道筋があり得ると思います。スマホユーザーとしては今後も料金プランや魅力的な端末の情報にアンテナを張り巡らしつつ、モバイルの世界を楽しむ事になるでしょうし、もし今スマホを毛嫌いしている方がおいでになった場合、家電量販店やスマホユーザーの家族や友人知人に断ってスマホを少し触って慣れておくのもいいかも知れません。そのくらい短期間で携帯電話を取り巻く状況はガラリと変わってしまいました。

国内の携帯端末メーカーは一部を除いてこぞってガラケーから撤退しているばかりでなく、スマートフォンを含むすべての携帯端末事業から撤退するところも出て来ました。

こういった事態は日本の製造業などの既存産業がいかに今後生き残っていくかを考える上でも貴重な教訓ともなるでしょう。

※この記事はITカレイドスコープ向けに同時に配信しています。

  • Posted by seikeiultimatum
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